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東京地方裁判所 平成元年(ワ)7237号 判決 1994年10月31日

東京都武蔵村山市伊奈平二丁目五一番地の一

原告

株式会社新川

右代表者代表取締役

安雲毅

右訴訟代理人弁護士

中村護

林千春

渥美三奈子

右訴訟復代理人弁護士

永見寿実

右輔佐人弁理士

田辺良徳

東京都羽村市栄町三丁目一番地の五

被告

株式会社カイジョー

(旧商号 海上電機株式会社)

右代表者代表取締役

馬島力

右訴訟代理人弁護士

八幡義博

主文

1  原告の請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  原告

1  被告は、別紙目録(一)、(二)記載のワイヤ切れ検出回路を製造し、譲渡し、貸し渡し、譲渡もしくは貸渡しのために展示してはならない。

2  被告は、原告に対し、金二〇〇〇万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

3  仮執行宣言。

二  被告

主文と同旨。

第二  当事者の主張

一  請求の原因

1  原告は、次の特許権(以下「本件特許権」といい、その特許発明を「本件発明」という。)を有している。

登録番号 第一〇七一八八二号

発明の名称 半導体ワイヤボンディングにおけるワイヤ切れ検出方法

出願日 昭和五一年三月五日

出願公告日及び公告番号

昭和五四年一〇月三一日(特公昭五四-三五〇六五号)

登録日 昭和五六年一一月三〇日

2  本件発明の特許出願の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」といい、本判決添付の特許公報を「本件公報」という。)の特許請求の範囲の記載は、次のとおりである。

「ワイヤの先端に電気トーチの放電によりボールを形成し、電気トーチの放電時にワイヤに流れる電流を検出してワイヤ切れの判別を行なうことを特徴とする半導体ワイヤボンディングにおけるワイヤ切れ検出方法。」

3  本件発明の構成要件を分説すると、次のとおりである。

A ワイヤの先端に電気トーチの放電によりボールを形成し、

B 電気トーチの放電時にワイヤに流れる電流を検出してワイヤ切れの判別を行うこと

C 以上を特徴とする半導体ワイヤボンディングにおけるワイヤ切れ検出方法

4  本件発明の目的及び作用効果

(一) 本件発明の目的

(1) 本件発明は、半導体ワイヤボンディングにおけるワイヤ切れ検出方法に関するものである。

(2) 一般に、半導体部品の組立てにおいては、ワイヤを保持する工具を半導体部品のリードフレームに相対的に変位させることによりスプールに巻かれたワイヤをリードフレームに取り付けられたペレット及びリードフレームに導いて熱圧着又は超音波によりボンディングし、クランパーの上昇によりワイヤを切断する。切断後もクランパーは閉じているので、一定の長さのワイヤが工具の下に出ている。このワイヤの端部にトーチによりボールを作る。その後クランパーが開き、ワイヤにスプールのバックテンションがかかるが、前記ボールによりスプールに巻き戻されるのは防止される。

(3) ところが、ボールが形成されなかった場合、又はボールが形成されてもボンディング途中でワイヤが切れた場合には、ワイヤは、スプールに巻き戻されて正常な作業を続行できなくなる。

(4) 従来、この種のワイヤ切れ検出方法は、半導体部品又は半導体部品の載置されたヒートブロックとクランパー又は工具との間に電圧を加え、その間にワイヤを介して電流を流しておき、ワイヤ切れが生じた場合に電流が遮断することにより検出している。

しかるに、この方法は、半導体部品のリード側が絶縁されているものは検出できない。また従来の方法は、あくまでワイヤ切れを検出するのみで、トーチにより形成されたボールの出来工合を判定することは困難で、そのため常に安定した品質を維持してボンディングを行うことができなかった。

(5) そこで、本件発明は、半導体部品のリード側が絶縁されているか否かにかかわらず全てのものに適用できるとともに、ボールの出来工合も判別できるワイヤ切れ検出方法を提供することを目的とする。

(二) 本件発明の作用効果

本件発明の方法によれば、ボール形成時にワイヤに流れる電流によって判別するため、リード側が絶縁されていても何ら支障をきたさない。また、ボールの出来工合もワイヤ切れの判別と同時に検出可能であるので、常に良品質のボンディングを行うことができるようになる。

5(一)  被告は、別紙目録(一)記載の半導体ワイヤボンディング装置におけるワイヤ切れ検出回路(以下「被告回路(一)」といい、その回路を使用した半導体ワイヤボンディング装置を「被告装置(一)」という。)及び同目録(二)記載の半導体ワイヤボンディング装置におけるワイヤ切れ検出回路(以下「被告回路(二)」といい、その回路を使用した半導体ワイヤボンディング装置を「被告装置(二)」という。)を業として製造、販売している。

(二)  被告は、被告回路(一)、(二)は、ワイヤ切れ検出回路だけでなく、ワイヤ切れ検出を行うかどうかにかかわりなくワイヤボンディング装置が本来基本的に具備している部分までもひっくるめて書かれた回路図であるというが、被告回路(一)、(二)において、放電部分とその後の検出回路部分とでは、一体不可分の関係にある機能であって、切り離すことは不可能である。

6  被告回路(一)のワイヤ切れ検出方法は、次のとおり、本件発明の構成要件を全て充足するから、本件発明の技術的範囲に属する。

(一) 被告回路(一)の具体的なワイヤ切れ判別方法は、次のとおりである。

(1) 連動スイッチ11、41の切替えによって、コンデンサ15に充電された電圧及び電源14の電圧が電気トーチ7とワイヤ1間に印加される。

ワイヤ1が正常に工具の下まで延在している場合は、電気トーチ7とワイヤ1間で放電が起こり、ワイヤ1の先端にボール1aが形成される。

この放電時にワイヤ1に電流が流れる。ワイヤ1に流れる電流は、線12、ダイオード23を通って抵抗25と定電圧ダイオード28に分流される。

そして、ダイオード23を通った電流が小さく、抵抗25と27、発光ダイオード30aの合成回路による電圧降下が五ボルト以下の場合には、電流は、定電圧ダイオード28の特性によって、定電圧ダイオード28には流れず、もっぱら抵抗25に流れる。抵抗25に流れた電流は、抵抗27と発光ダイオード30aに分流され、電流が一定電流以下の場合には抵抗27に流れ、発光ダイオード30aには流れず、一定電流以上の場合には発光ダイオード30aに流れる。

他方、ダイオード23に流れる電流が大きく、前記合成回路による電圧降下が五ボルトを超えようとする場合には、電流は、抵抗25に流れるだけでなく定電圧ダイオード28にも流れる。

ダイオード23に流れる電流が更に大きくなった場合には、定電圧ダイオード28に分流する電流は増加するが、抵抗25に流れる電流は定電圧ダイオード28の特性によって一定電流以上にはならない。

フォトカプラ30の発光ダイオード30aに電流が流れると、発光ダイオード30aが作動する。この発光ダイオード30aが作動すると、フォトトランジスタ30bのコレクタ、エミッタが導通状態となり、トランジスタ31を介して検出端子32aと32bも導通状態となる。

他方、ワイヤ1が正常に工具の下まで延在していない場合は、電気トーチ7とワイヤ1間で放電が起こらず、ワイヤ1に電流が流れないので、線12以下にも電流は流れない。このためフォトトランジスタ30bのコレクタ、エミッタが非導通状態となり、検出端子32aと32bも非導通状態となる。

以上から、放電が起こらず、検出端子32aと32bが非導通状態となった時、ワイヤ1の先端にボールが形成されていないことを判別し、ワイヤ切れがあると判断している。また、放電が起こり、検出端子32aと32bが導通状態となった時は、ワイヤ切れがないと判断している。

(2) また、被告回路(一)においては、ワイヤ切れによりボール形成時に工具の下端からワイヤが全く延在していない場合、及びワイヤ切れではないがワイヤが極端に短い場合には、放電しないからワイヤに電流が流れず、正常なボール形成時における電流と大きな差が生じ、定電圧ダイオードの両端に電圧が出ず、フォトカプラが作動しない。これによりワイヤ切れと同時にボールの出来工合が悪いことも判別している。

(二) 被告回路(一)のワイヤ切れ検出方法は、ワイヤの先端に電気トーチの放電によりボールを形成するというものであり、また、半導体ワイヤボンディング装置におけるワイヤ切れ検出方法であるから、本件発明の構成要件A、Cを充足する。

(三) 被告回路(一)のワイヤ切れ検出方法は、次のとおり、電気トーチの放電時にワイヤに流れる電流を検出してワイヤ切れの判別を行うものであるから、本件発明の構成要件Bを充足する。

(1) 本件発明の構成要件Bの「ワイヤ切れ」とは、ボンディング動作中に、何らかの原因で工具(キャピラリ)の先端からワイヤがなくなることであり、本件発明の構成要件Bの「ワイヤ切れの判別を行なう」とは、少なくとも工具(キャピラリ)の先端からワイヤが出ていない場合を判別する意味である。

電流とボールの出来工合の関係の判別は、本件発明の目的であるワイヤ切れの判別に必須の事項ではないから、電流の大小を測定するかどうか、又は電流のバラツキを検出するかどうかは、本件発明の要件ではない。

このことは、本件公報の発明の詳細な説明中の右用語の使用方法を見ても明らかである。

被告回路(一)は、前記のとおり、放電が起こらず、検出端子32aと32bが非導通状態となった時には、ワイヤ1の先端にボールが形成されていないことを判別し、ワイヤ切れがあると判断しており、また、放電が起こり、検出端子32aと32bが導通状態となった時には、ワイヤ切れがないと判断しているのであるから、本件発明の構成要件Bの「電流を検出して」、「ワイヤ切れの判別を行なう」に該当する。

被告回路(一)において、放電した際に、定電圧ダイオードの両端に現れる一定電圧の有無のみを検出しているとしても、電圧は、電流が流れるからこそ検出できるのであり、被告回路(一)は、回路全体が電流を検出するための構造となっており、電流と電圧とが一定の関係にあることから、電圧をみることによって、電流が流れたか否かを判別しているものである。

ワイヤ1に電流が流れるか流れないかを、電流の有無を検出することによって判断するか、もしくは電圧の有無(あるいは電圧降下)を検出することによって判断するかは、ワイヤ切れの判別の方法としては価値的に同一である。

(2) 被告は、本件発明においては、ワイヤに流れている電流を検出すること、即ちワイヤに電流検出器を設けてその電流を検出することが必須要件であるというが、本件発明は、あくまでも放電時にワイヤに流れる電流の有無を検出することを要件としているものであり、このワイヤに流れる電流をどの位置で検出するかを限定するものではない。

(3) 被告は、被告回路(一)が、トランジスタ31のコレクタ、エミッタ間の導通状態の継続時間の長短に着目してワイヤ切れ、ワイヤタッチを検出しているというが、「継続時間」といっても、所詮は導通状態(電流が流れている状態)か非導通状態(電流が流れていない状態)かを判断している中での、いわば場合分けにすぎない事柄であって、電流を見ていることには変わりがない。そしてワイヤに流れる電流を検出してワイヤ切れを判断している以上、本件発明の技術的範囲に属するものである。

なお、後記二5(三)の被告の主張は認める。

7  被告回路(一)は、本件発明の実施にのみ使用する物に当たる。

被告回路(一)は、ワイヤボンディング装置におけるワイヤ切れ検出の実施にのみ用いるもので、汎用性はない。また、ワイヤ切れ検出回路は、それ自体では何ら用をなすものではなく、ワイヤボンディング装置に用いて初めて効果を発揮するものである。したがって、被告回路(一)は、本件発明の方法の実施にのみ使用する物である。

8  被告回路(二)のワイヤ切れ検出方法は、次のとおり、本件発明の構成要件を全て充足するから、本件発明の技術的範囲に属する。

(一) 被告回路(二)の具体的なワイヤ切れ判別方法は、次のとおりである。

半導体スイッチ44をオンにすると、オンにした瞬間は電流検出用抵抗92に電流が流れない状態になり、高圧電源43の電圧は、電源制御用トランジスタ90を通し、線91、93、46及び電気トーチ7に伝わる。これにより、電気トーチ7とワイヤ1間で放電が生じ、ワイヤ1を通して電流が流れる。このワイヤ1に流れる電流は、電流検出用抵抗92を通ってきたものである。この電流検出用抵抗92に流れる電流と設定電流値との誤差を、差動アンプ97と可変基準電圧源94を使用して検出し、電源制御用トランジスタ90を制御して電気トーチ7の電圧、即ち線46の電圧をコントロールする。

右のコントロールについて更に詳細に述べると、線91の電圧を基準として、可変基準電圧源94の電圧と電流検出用抵抗92で生じた電圧とがそれぞれ線96、98を通して差動アンプ97に入力され、その電圧の差に比例した出力が差動アンプ97から電源制御用トランジスタ90に線99を通して入力される。これにより、電流検出用抵抗92の両端の電圧、即ち線91に対する線93の電圧が常に可変基準電圧源94の電圧と同じになるように制御される。電流検出用抵抗92の抵抗値は一定であるので、前記のように電流検出用抵抗92の両端の電圧を可変基準電圧源94の電圧と同じに保つことによって、電流検出用抵抗92に一定電流を流すように制御している。

そこで、第一に、工具3の下端より延在するワイヤ1の長さが所定量であると、ワイヤ1に流れる電流のほとんどは電流検出用抵抗92に流れるので、その電流を差動アンプ97と可変基準電圧源94を使用して検出し、差動アンプ97と電源制御用トランジスタ90の制御によって、線46及び電気トーチ7に所定の範囲の電圧を発生させて、ワイヤ1に所定の電流を流し、所定の大きさのボール1aが形成される。

第二に、工具3の下端より延在するワイヤ1の長さが所定量より短いと(ワイヤ延在不足の状態)、ワイヤ1と電気トーチ7との距離が長くなるので、線46及び電気トーチ7の電圧は、前記所定範囲の電圧より高い電圧となる。

第三に、工具3の下端より延在するワイヤ1の長さが所定量より長いと(ワイヤ延在過の状態)、ワイヤ1と電気トーチ7との距離が短くなるので、線46及び電気トーチ7の電圧は、前記所定範囲の電圧より低い電圧となる。このように、ワイヤ1に流れる電流を電流検出用抵抗92を使用して検出し、この電流が一定になるように線46及び電気トーチ7の電圧を制御しており、このように制御されて線46に電圧が生じると、その電圧は、抵抗51と抵抗52とで分圧されて線53に伝えられる。

そこで、前記所定範囲の電圧を判別するため、可変抵抗56Aにより上限を定める上限基準電圧を、可変抵抗56Bにより下限を定める下限基準電圧をそれぞれ設定しておき、線53の電圧は、差動アンプ55Aで右上限基準電圧と、差動アンプ55Bで右下限基準電圧とそれぞれ比較される。

したがって、前記第一のように、線53の電圧が所定範囲の電圧である場合には、この電圧は、上限基準電圧より小さく、下限基準電圧より大きいので、差動アンプ55A、55Bからは出力しない。

前記第二のように、ワイヤ延在不足によって線53の電圧が上限電圧以上になると、この上限電圧は、差動アンプ55A、55Bで上限基準電圧及び下限基準電圧と比較され、その結果差動アンプ55Aから出力する。この出力は、フォトサイリスタカプラ60Aの発光ダイオード60a1に供給され、発光ダイオード60a1が作動する。そして、フォトサイリスタ60a2により電流に変換され、発光ダイオード63Aが点灯し、ワイヤ延在不足であることが表示される。

前記第三のように、ワイヤ延在過によって線53の電圧が下限電圧以下になると、前記ワイヤ延在不足の場合と同様に差動アンプ55A、55Bにより比較され、この場合は差動アンプ55Bから出力する。この出力はフォトサイリスタカプラ60Bの作用によって発光ダイオード63Bが点灯し、ワイヤ延在過であることが表示される。

また、前記のとおり、ワイヤ延在不足又はワイヤ延在過によって差動アンプ55A、55Bのいずれか一方から出力すると、この出力は、フォトカプラ73の発光ダイオード73aに供給され、発光ダイオード73aが作動する。そして、フォトトランジスタ73bのコレクタ、エミッタ間が非導通状態となり、検出端子78a、78bが非導通状態となるので、ワイヤ延在不足又は延在過の異常が発生したことが判る。

(二) 被告回路(二)のワイヤ切れ検出方法は、ワイヤの先端に電気トーチの放電によりボールを形成するというものであり、また、半導体ワイヤボンディング装置におけるワイヤ切れ検出方法であるから、本件発明の構成要件A、Cを充足する。

(三) 被告回路(二)のワイヤ切れ検出方法は、次のとおり、電気トーチの放電時にワイヤに流れる電流を検出してワイヤ切れの判別を行うというものであるから、本件発明の構成要件Bを充足する。

即ち、本件発明は、あくまでも放電時にワイヤに流れる電流の有無を検出することを要件としているものであって、このワイヤに流れる電流をどのようにして検出するかを限定するものではない。

被告回路(二)の方法は、電気トーチの放電時にワイヤに流れる電流を、電流検出用抵抗を使用して差動アンプで検出し、この検出出力により電源制御用トランジスタを制御し電流検出用抵抗に一定電流が流れるようにして電気トーチの電圧を制御し、この電圧の大きさによりワイヤ切れの判別を行うというものである。

ところで、被告回路(二)の抵抗51と抵抗52とによって分圧した電圧の変化は、抵抗92に流れる電流の変化を、差動アンプ97で増幅して電圧の変化に置き換え、検出できるものに他ならない。したがって、被告回路(二)は、放電時にワイヤに流れる電流による電圧降下を利用して右電流を検出しているのであり、このようにワイヤに流れる電流による電圧降下を利用することも、本件発明の構成要件Bにいう「電流の検出」に当たる。

9  被告回路(二)は、本件発明の実施にのみ使用する物に当たる。

被告回路(二)は、ワイヤボンディング装置におけるワイヤ切れ検出の実施にのみ用いるもので、汎用性はない。また、ワイヤ切れ検出回路は、それ自体では何ら用をなすものではなく、ワイヤボンディング装置に用いて初めて効果を発揮するものである。したがって、被告回路(二)は、本件発明の方法の実施にのみ使用する物である。

10  被告は、遅くとも昭和六二年一〇月末日から平成三年四月一九日までの間に、被告回路(一)及び(二)を用いた被告装置(一)及び(二)を少なくとも五〇〇台(年当たり三〇〇台)製造、販売した。

被告装置(一)及び(二)の一台当たりの販売価格は、最低でも八〇〇万円であるところ、原告が本件発明の実施を許諾するとすれば装置一台につき少なくとも〇・五パーセントの実施料を請求すべきものであるので、原告は、被告に対し、一台当たり四万円、総額二〇〇〇万円を被告に対する損害賠償として請求することができる。

11  よって、原告は、被告に対し、特許法一〇一条二号、一〇〇条一項の規定に基づき被告回路(一)及び(二)の製造、販売等の差止め、並びに、民法七〇九条、特許法一〇二条二項の規定に基づき損害賠償金二〇〇〇万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。

二  請求の原因に対する認否及び被告の主張

1  請求の原因1及び2は認める。

2  請求の原因3は、それが特許請求の範囲の文言を区切って箇条書きにしたものであることは認める。

3  請求の原因4は、本件公報に同文の記載があることは認める。

4(一)  請求の原因5(一)中、被告が、別紙目録(一)及び(二)の図面及び構造の説明の項記載の被告回路(一)及び(二)を用いた半導体ワイヤボンディング装置を製造、販売していることは認める。

(二)  本件訴訟は、特許法一〇一条二号に基づく請求であるから、対象物件は、本件発明である「半導体ワイヤボンディング装置におけるワイヤ切れ検出方法」の実施にのみ使用される物(検出回路)でなければならない。

ところが、被告回路(一)、(二)は、ワイヤ切れ検出回路だけでなく、ワイヤ切れ検出を行うかどうかにかかわりなくワイヤボンディング装置が本来基本的に具備している部分までも含めて書かれた回路図である。

本件の対象は、別紙目録(一)限定図(別紙目録(一)添付の図に一点鎖線を加えたもの)中の一点鎖線で囲まれた部分の回路及び別紙目録(二)限定図(別紙目録(二)添付の図に一点鎖線を加えたもの)中の一点鎖線で囲まれた部分の回路のみであるべきで、別紙目録(一)、(二)の内容も、本件発明の方法の実施にのみ使用するものではない部分は除去し、ワイヤ切れ検出を行うための検出回路だけをその内容とすべきである。

5(一)  請求の原因6の柱書、(一)及び(三)は否認する。

(二)  本件発明は、ワイヤに流れる放電電流値とできるボールの大きさとの間に一定の関係があることに着眼して、ボールの出来工合を放電電流値を測定することによって判断し、ボールの大きさが適正な範囲の下限より小さい場合及び適正な範囲の上限より大きい場合にワイヤ切れがあったと判断するものである。

したがってワイヤ切れの判別とボールの出来工合の判別は切り離すことができないものである。

本件発明の構成要件Bにいう「ワイヤに流れる電流を検出して」とは、単に電流が流れているかいないかを見るだけではなく、電流値の大小を測定してそのバラツキを見ることを意味する。また、構成要件Bにいう「ワイヤ切れの判別」とは、ボールの出来工合も判別できるワイヤ切れ検出方法を意味する。つまり、キャピラリ先端からワイヤが出ていない場合、キャピラリ先端から出ているワイヤが長すぎる場合、キャピラリ先端から出ているワイヤが短すぎる場合を全て含むものである。

(三)  ところで、被告回路(一)に関する別紙目録(一)の回路図記載の検出端子32aと32bは、接続ケーブルによって、コネクタCN-106の<3>及び<4>へそれぞれ接続されており、コネクタCN-106の<3>及び<4>に接続されている回路を見やすく抽出したのが別紙図面第1図である(以下、被告回路(一)と右回路を併せた回路を「被告回路(一)’」という。)。

被告回路(一)のワイヤ1の先端と電気トーチ7との間に放電が起きると定電圧ダイオード28の両端に放電電流の大小にかかわりなく五ボルトの電圧が現われ、この五ボルトを抵抗25と抵抗27で分圧した一定電圧が発光ダイオード30aに印加される。発光ダイオード30aは、放電の継続している間、一定の発光を継続する。発光ダイオード30aの発した光がフォトトランジスタ30bに当たると、フォトトランジスタ30bのコレクタCとエミッタE間が導通状態となる。

一方、フォトトランジスタ30bとトランジスタ31のコレクタCには、五ボルト電源からコネクタCN-106の端子<3>、検出端子32aを経由して五ボルトの電圧が印加されているところ、フォトトランジスタ30bのコレクタCとエミッタE間が導通状態となると、右五ボルト電源からトランジスタ31のベースBへ電流が流れ、トランジスタ31のコレクタCとエミッタE間が導通状態となり、その結果、検出端子32aと32b間は導通状態となる。この導通状態は、放電電流の大小にかかわりなく、放電が継続している問継続し、放電しないとき及び放電が終ったときに非導通状態となる。

右五ボルト電源の電圧は、コネクタCN-106の端子<3>、検出端子32a、トランジスタ31、検出端子32b、コネクタCN-106の端子<4>を通してK点に印加されるので、K点の電圧は、検出端子32aと32b間が非導通状態のときには零ボルト、導通状態のときには五ボルトとなる。

K点に五ボルトの電圧が印加されると、S点の電圧は、時間の経過とともに、零ボルトから増加していく(別紙図面第2図の曲線Ⅰ)。そして、トランジスタQ1のエミッタフォロアにより、T点とP点に、右電圧変化とほとんど同じ電圧変化が現われる(別紙図面第2図の曲線Ⅱ)。

P点の電圧は、二手に分れて第1コンパレータc1と第2コンパレータc2のマイナス端子に印加される。

一方、第1コンパレータc1のプラス端子へは、可変抵抗器VR18を通じて第1基準電圧が印加されており、第1コンパレータc1のマイナス端子の電圧がプラス端子の第1基準電圧より低い間は、高い電圧(H)を出力し、マイナス端子の電圧がプラス端子の第1基準電圧を超えると、低い電圧(L)が出力されるようになっている。

同様に、第2コンパレータc2のプラス端子へは、可変抵抗器VR19を通じて第2基準電圧が印加されており、第2コンパレータc2のマイナス端子の電圧がプラス端子の第2基準電圧より低い間は、高い電圧(H)を出力し、マイナス端子の電圧がプラス端子の第2基準電圧を超えると、低い電圧(L)が出力されるようになっている。

別紙図面第2図から、時間t1のときのP点の電圧e1を求め、可変抵抗器VR18を調整して、第1コンパレータc1のプラス端子に印加される第1基準電圧e1を設定し、同様に、時間t2のとぎのP点の電圧e2を求め、可変抵抗器VR19を調整して、第2コンパレータc2のプラス端子に印加される第2基準電圧e2を設定する。

このようにして、第1コンパレータc1の出力がHの時は異常状態を意味し、Lの時は正常状態を意味するものとし、第2コンパレータc2の出力がLの時は異常状態を意味し、Hの時は正常状態を意味するものとして、両方とも正常の時にワイヤ切れがないものと判断することとしている。即ち、放電時間がt1からt2の間であればワイヤ切れはなく、放電時間がt1よりも短かい場合、t2より長い場合にはワイヤ切れがあると判断しようとするものである(別紙図面第3図)。

(四)  このように、被告回路(一)’は、検出端子32aと32b間の導通状態(放電が起きて定電圧ダイオード28の両端に五ボルトが現われている状態)の継続時間が適正範囲内であるかどうかによってワイヤ切れの有無を判別している。いいかえれば、被告回路(一)’は、トランジスタ31のコレクタ、エミッタ間の導通状態の継続時間の長短に着目してワイヤ切れ、ワイヤタッチを検出しているのである。

したがって、被告回路(一)は、本件発明のように放電電流値を検出測定してワイヤ切れの有無の判別を行っておらず、技術的思想を全く異にするものである。

原告は、被告のいう「継続時間」が所詮は導通状態(電流が流れている状態)か非導通状態(電流が流れていない状態)かを判断している中での、いわば場合分けにすぎない事柄であって、電流を見ていることには変わりがないという。しかし、放電継続時間と放電電流が流れている時間が同じであり、「導通」という語が電流の流れていることを意味する語であったとしても(なお、「導通状態」という語は、電圧が伝わることができその結果電流が流れることのできる状態をいうのであり、電流が流れることのみを指す用語ではない。)、そのことから当然に電流を検出しているということが導き出されるわけではない。なぜならば、放電継続時間を見る手段としては、電流を検出する方法もあるであろうが、定電圧ダイオードを用いてその両端の一定電圧を検出する方法もあるからである。また導通状態か非導通状態かという判別と、導通状態の継続時間がt1秒からt2秒までの範囲内にあるかどうかという判別とでは質の異なる判別であり、後者の判断が前者の判断の場合分けなどといえるものではない。

(五)  仮に、原告が主張するように、別紙目録(一)記載のとおり、検出端子32aと32bの先の回路を考慮していない被告回路(一)がワイヤ切れ検出回路であったとしても、被告回路(一)の検出回路においては、電気トーチの放電時に、ワイヤに流れる電流を検出してワイヤ切れの判別を行っておらず、放電した際に、定電圧ダイオードの両端に現れる一定電圧の有無のみを検出している。この一定電圧は、用いる定電圧ダイオードに固有の値の電圧であり、ワイヤに流れる電流の大小に関係がない。定電圧ダイオードの両端に現われる電圧は、電流が流れたから生ずるというものではなく、導通状態になることによって電圧が現われると同時に電流も流れるのである。フォトダイオード30aには、一定電圧が印加されるから、それに応じた電流が流れるが、この電流は、放電電流のバラツキに関係なく一定である。

(六)  原告は、本件発明の特許出願後の昭和五一年一一月八日に別途「半導体ワイヤボンダにおけるワイヤ切れ検出方法」という名称の発明を特許出願した(特願昭五一-一三三二一三号)。右特許願に添付された明細書の特許請求の範囲の項の記載は、「電気トーチをスパークさせてワイヤの先端にボールを作る時、このスパーク電流を導く導線に流れる電流を検出コアにより検出してワイヤ切れの判定を行うことを特徴とする半導体ワイヤボンダにおけるワイヤ切れ検出方法」というものであった。

特許庁審査官は、昭和五七年三月一日付けで、本件公報を引用して、右特許請求の範囲に記載された発明は本件発明と同一であるとの理由で拒絶理由通知をした。これに対して、原告は、同年四月三〇日付け手続補正書で、特許請求の範囲を「ワイヤの先端にトーチチップのスパークによりボールを形成し、トーチチップのスパーク時に高圧発生源とトーチチップ問を結ぶ導線又はワイヤの末端と高圧発生源を結ぶ導線に流れる電流を検出してワイヤ切れの判定を行なうことを特徴とする半導体ワイヤボンダにおけるワイヤ切れ検出方法」と補正し、また同日付け意見書において、「引例は、電気トーチの放電時に半導体部品接続用のワイヤに流れる電流を検出することを要旨としている。これに対して本願は、トーチチップのスパーク時に高圧発生源とトーチチップ間を結ぶ導線又はワイヤの末端と高圧発生源を結ぶ導線に流れる電流を検出することを要旨としており、引例と同一ではない。即ち、引例は半導体部品接続用のワイヤに流れる電流を検出するので、電流検出器をキャピラリとワイヤホルダー間の狭い場所に配置しなければならない。これに対して本願は、電流検出器を高圧発生源とトーチチップ間又は高圧発生源とワイヤホルダー間の広い場所に自由に配置できる特徴を有する。」としている。

そうすると、本件発明においては、ワイヤに流れている電流を検出すること、即ちワイヤに電流検出器を設けてその電流を検出することが必須要件であると解すべきである。

これに対し、被告回路(一)は、高圧電源回路内にあり、クランパー2からの導線が接続される高圧電源回路の端子と高圧電源回路内の高圧発生回路とを結ぶ導線に設けられており、ワイヤ1には設けられていない。

したがって、ワイヤ1の電流を検出してはいないから、本件発明の構成要件Bを充足しない。

6  請求の原因7は否認する。

被告の製造、販売する被告装置(一)ないしこれに用いられている被告回路(一)は、方法の発明である本件発明の方法の実施にのみ使用する物ではない。

被告装置(一)は、ワイヤ切れ検出方法の実施にのみ使用するものではない。ワイヤ切れ検出方法は、被告装置(一)に採用されている多種の機能のうちの一つにすぎない。

また、被告回路(一)は、ワイヤ切れ検出にだけ用いられる特殊な回路ではなく、ごく一般的な電圧検出回路である。被告は、これをワイヤ切れ検出用に用いているだけであり、電圧検出回路自体はワイヤ切れ検出用以外にも多々用途のある回路である。

7  請求の原因8の柱書き、(一)及び(三)は否認する。

被告回路(二)は、本件発明の構成要件Bを充足しない。

本件発明の構成要件Bの「ワイヤに流れる電流を検出して」にいう「電流」には、電圧を含まない。即ち、電圧と電流は、異なるものであり、その測定装置や測定方法も別であり、それぞれ直接に測定されるもので、電流が流れていなくても電圧を測定することは可能である。ワイヤ切れの検出は、電圧か電流かのどちらかを直接監視していれば検出できるものであって、本件発明は、電流を検出する方法に関するものである。

これに対して、被告回路(二)においては、ワイヤに流れる電流を、原告のいう電流検出抵抗を使用して差動アンプで検出するということを行っていない。電気トーチ用の電源は定電圧電源であり、放電時の電流は、放電状態が変っても常に一定で変化しないから、電流を測定し、そのバラツキを検出することができない。被告回路(二)の検出回路は、あくまでもワイヤと電気トーチの間に印加された高電圧を分圧して検出することにより、ワイヤ切れやワイヤタッチを検出している。

8  請求の原因9は否認する。

被告の製造、販売する被告装置(二)ないしこれに用いられている被告回路(二)は、方法の発明である本件発明の方法の実施にのみ使用する物ではない。

被告装置(二)は、ワイヤ切れ検出方法の実施にのみ使用するものではない。ワイヤ切れ検出方法は、被告装置(二)に採用されている多種の機能のうちの一つにすぎない。

また、被告回路(二)は、ワイヤ切れ検出にだけ用いられる特殊な回路ではなく、ごく一般的な電圧検出回路である。被告は、これをワイヤ切れ検出用に用いているだけであり、電圧検出回路自体はワイヤ切れ検出用以外にも多々用途のある回路である。

9  請求の原因10は否認する。

10  請求の原因11は争う。

第三  証拠関係

証拠の関係は、本件記録中の証拠に関する目録記載のとおりであるからこれを引用する。

理由

一1  請求の原因1及び2の事実は当事者間に争いがない。

2  請求の原因3記載のA、B、Cが特許請求の範囲の文言を区切って箇条書きにしたものであることは当事者間に争いがなく、右争いのない事実に成立に争いの居い甲第二号証及び弁論の全趣旨を併せ考えれば、右A、B、Cが、本件発明の構成要件であると認められる。

3  請求の原因4について、本件公報に同文の記載があることは当事者間に争いがなく、右争いのない事実に前記甲第二号証及び弁論の全趣旨を併せ考えれば、本件発明の目的及び作用効果は、請求の原因4のとおりであることが認められる。

4  請求の原因5(一)中、被告が別紙目録(一)、(二)の図面及び構造の説明の項記載の被告回路(一)、(二)を用いた半導体ワイヤボンディング装置を製造、販売していることは、当事者間に争いがない。

二  本件発明の構成要件Bの「電気トーチの放電時にワイヤに流れる電流を検出してワイヤ切れの判別を行うこと」の意味は、「電気トーチの放電時にワイヤに流れる電流を検出」することによって「ワイヤ切れの判別を行う」ことと解されるから、構成要件Bにおいて目的とされている「ワイヤ切れの判別」の意味及び構成要件Bにおいて手段とされている「電流を検出し」の意味について判断して、構成要件Bの意味を明らかにする。

1  「ワイヤ切れの判別」の意味について

(一)  本件明細書の特許請求の範囲の記載中の「ワイヤ切れ」の語が、専門用語として特別の意味を有していることを認めるに足りる証拠はない。一般用語としての「切れる」には、「一続きになっていたものが、分かれ離れる。物が尽きる。」等の意味があることは当裁判所に顕著であるから、その名詞形である「切れ」が「ワイヤ」の後について一語となった「ワイヤ切れ」は一般用語として解すれば、ワイヤボンディング用のワイヤが切断して分離されていること、あるいはワイヤボンディング用のワイヤが尽きて、なくなっていることを意味するものとも解される。しかし、このような意味のみでは、本件発明の技術的意味は明らかではないところ、特許請求の範囲自体の記載からは、それ以上に「ワイヤ切れ」の意味を明らかにすることはできない。

(二)  本件明細書の発明の詳細な説明の記載について検討する。

本件明細書の発明の詳細な説明には、前記一3に認定したように、本件発明の目的、効果について請求の原因4のとおりの記載がある。

請求の原因4(一)(2)の記載は、本件発明が前提とする半導体ワイヤボンディング装置の正常な作動状況を述べたものであるが、正常な作動においても、ワイヤをペレット及びリードフレームに導いて熱圧着又は超音波によりボンディングした後、クランパーの上昇によりワイヤを切断するものであることが示されている。そして、正常な作動の場合、切断後一定の長さのワイヤが工具の下に出ており、このワイヤの端部にトーチによりボールを作るので、その後クランパーが開き、ワイヤにバックテンションがかかっても、このボールによりワイヤがスプールに巻き戻されるのは防止されることが記載されている。

また、請求の原因4(一)(3)の記載は、「ボールが形成されなかった場合、又はボールが形成されてもボンディング途中でワイヤが切れた場合にはワイヤはスプールに巻き戻されて正常な作業を続行できなくなる。」(本件公報一頁2欄一行から四行)というものであるが、本件発明の技術的課題の対象となる、半導体ワイヤボンディング装置の正常でない作動状態を示すものである。

その直後に続く請求の原因4(一)(4)の記載は、本件発明に対する従来技術の説明とその欠点についての記載であるが、冒頭の「従来、この種のワイヤ切れ検出方法は」との部分の「この種のワイヤ切れ」とは、その直前の「ボールが形成されなかった場合、又はボールが形成されてもボンディング途中でワイヤが切れた場合にはワイヤはスプールに巻き戻されて正常な作業を続行できなくなる。」に示された状態を指していることは文理上明らかであり、また、従来技術では、ワイヤ切れは、半導体部品の載置されたヒートブロックとクランパー又は工具との間に電圧を加え、その間にワイヤを介して電流を流しておき、ワイヤ切れが生じた場合に電流が遮断することにより検出されている。

また、請求の原因4(一)(5)の記載は、右のような従来技術の欠点に対する本件発明の目的を示すものであり、請求の原因4(二)の記載は本件発明の効果を示すものであるが、「ボールの出来工合も判別できるワイヤ切れ検出方法を提供することを目的とする。」(同一頁2欄一九行から二〇行)、「ボールの出来工合もワイヤ切れの判別と同時に検出可能であるので、常に良品質のボンディングを行なうことができるようになる。」(同二頁4欄四行から七行)と、いずれも、ワイヤ切れの判別(検出)とボールの出来工合の判別(検出)とは別のことであることを前提に、ボールの出来工合も判別できるワイヤ切れ検出方法を提供することを本件発明の目的とし、本件発明はこれを達成する効果を奏しているものであるとしている。

さらに、発明の詳細な説明の実施例についての説明には、「本発明においては、前記ボール1aの成形に電気トーチ7を使用し、この電気トーチ7によりワイヤ1に高電圧を加え、放電した時にワイヤ1に流れる電流を測定し、その電流のバラツキによりワイヤ切れ及びボールの出来工合を判別するものである。即ち、ボンディング途中にワイヤ切れが生じた場合は、ワイヤ1はスプール(図示せず)に巻き戻されるため、工具3よりワイヤ1は突出していなく、電気トーチ7を放電してもワイヤ1には電流が流れない。またクランパー2によりワイヤ1を切断する時に、正常な切断が行なわれなかった場合は、ボール1aを成形するために必要な一定の長さのワイヤ1が工具3の下に出ていないことになる。そのためワイヤ1の先端と電気トーチ7との距離が変化し、ワイヤ1に流れる電流は正常なボール成形時に流れる電流に比較して大きな差が生じる。そこでワイヤに流れる電流を測定することにより、ワイヤ切れ及びボールの出来工合を判別することができる。」(同一頁2欄二八行から二頁3欄一〇行)との記載がある。

(三)  右(一)、(二)の事実によれば、本件発明の「ワイヤ切れ」とは、ボンディング後、正常な作動として予定されたようにワイヤが切断されるのではなく、ボンディング途中でワイヤが切れて、ワイヤがスプールに巻き戻されてしまったか、少なくとも工具から突出していない状態をいうものと認められる。

したがって、本件発明の構成要件Bの「ワイヤ切れの判別」とは、右の意味での「ワイヤ切れ」の状態とそうでない状態とをみわけ、区別することをいうものと認められる。

(四)  右(二)の事実によれば、発明の詳細な説明中で使用されている「ボールの出来工合の判別」とは、装置が正常に作動して、ワイヤの切断後一定の長さのワイヤが工具の下に出ており、このワイヤの端部にトーチにより作られたボールが、正常なものであるか、ワイヤの切断が正常に行われず、正常な場合の一定の長さではないワイヤが工具の下に出ており、このワイヤの端部にトーチにより作られたボールが正常なものでないかを、みわけ、区別することをいうものと認められる。

発明の詳細な説明中の、本件発明の目的についての説明、効果についての説明には、ワイヤ切れの判別(検出)とボールの出来工合の判別(検出)とは別のことであることを前提に、ボールの出来工合も判別できるワイヤ切れ検出方法を提供することを本件発明の目的とし、本件発明はこれを達成する効果を奏しているものであるとしているが、前記(二)の事実によれば、従来技術と異なり、本件発明のように、電気トーチの放電時のワイヤに流れる電流を検出すれば、ワイヤ切れのみではなく、ボールの出来工合をも判別できるところから、右のとおり、本件発明の目的、効果として、ボールの出来工合の判別が上げられているものの、「ボールの出来工合も判別できるワイヤ切れ検出方法を提供することを目的とする。」、「ボールの出来工合もワイヤ切れの判別と同時に検出可能であるので、」という文言からもボールの出来工合の判別は、付随的な目的、効果とされているものと認められる上、本件明細書においては、「ワイヤ切れ」と「ボールの出来工合」は区別して使用されているのに、特許請求の範囲の記載にはボールの出来工合の判別を行うことは記載されていないから、特許請求の範囲に記載された発明にはボールの出来工合を判別することは含まれないものである。

(五)  もっとも、成立に争いのない乙第一二号証によれば、原告は、被告の請求した本件発明を無効とする審判請求事件の審決取消訴訟(平成三年(行ケ)第一四〇号)の審理中に東京高等裁判所宛に提出した平成四年三月一〇日付け技術説明書において、「被告会社では、昭和五〇年に入り鋭意研究開発に努めたところ、昭和五一年二月に電気トーチによるボール形成の場合には、スパーク時の電流を検出することにより、種々の状態のワイヤ切れが判別できることに成功し、昭和五一年三月に出願した。これが本件特許発明である。」(ここに「被告会社」とは本件訴訟における原告のことである。)などと説明し、また、ワイヤ切れ状態の説明として、

a 半導体チップの電極からリードヘキャピラリの移動中にワイヤが切断し、ワイヤがキャピラリから抜けてしまった状態、

b リードへ接触あるいはボンディング動作中にワイヤが切断し、ワイヤがキャピラリから抜けてしまった状態、

c リードヘボンディングした後、クランパを閉じてクランパとともにキャピラリを上昇させて、リード側で通常の動作でワイヤを切断する時に、正常なワイヤ切断が行われず、リード側の圧着面からワイヤが剥がれ、その後の動作で閉じた状態のクランパとともにキャピラリが定位置まで上昇し、半導体チップの電極部とクランパとの間でワイヤが切断してしまった状態、

d ボンディング後、クランパを閉じてクランパをキャピラリとともに上昇させて、リード側からワイヤを切断する時にボンディングされたワイヤの付根から切断しないで、キャピラリの先端からわずかに突出して切断してしまった状態、

e キャピラリの中程で切断してしまった状態、

f キャピラリとクランパとの間でワイヤが切断してしまった状態があると説明している。

また、成立について当事者間に争いのない甲第二〇号証によれば、原告は、前記審決取消訴訟において、同事件の原告である本件被告の、「半導体ワイヤボンディングにおいて、ワイヤ切れが発生した場合には、<1>キャピラリの先端からワイヤが全く出ていない、<2>キャピラリの先端からワイヤが出ているが短かすぎる、<3>キャピラリの先端からワイヤが出ているが長がすぎる、のいずれかである。」旨の主張を認める旨の陳述をしたことが認められる。

右のような審決取消訴訟における原告の技術説明や陳述は、右(三)に認定した本件発明における「ワイヤ切れ」の意味と異なっているが、右(三)の認定は本件明細書の記載に基づくものであり、かつ、前記甲第二〇号証によれば、原告が右のような説明、陳述をしたことによって勝訴の判決が得られたものではないと認められるから、前記審決取消訴訟における原告の行為は、本件発明の「ワイヤ切れ」の意味についての前記認定を左右するものではない。

2  「電流を検出し」の意味について

(一)  専門用語としての「電流」の意味は、「電気の流れ。電荷の流れ。」であり、これは一般用語でもあることは当裁判所に顕著である。また、「検出」の語は、計測技術の分野の専門用語として「測定量を信号として取り出すこと。」(JIS Z八一〇三)の意味を有し、一般用語としては「しらべて見つけ出す。検査して見つけ出す。」等の意味を有することも当裁判所に顕著である。そして、右専門用語としての検出の意味にいう信号は、測定量を物理量の種類の変換や物理量の性質の変換等、物理的に変換して取り出すことを含むものである。

(二)  本件明細書の特許請求の範囲の記載について検討すると、特許請求の範囲には、「ワイヤの先端に電気トーチの放電によりボールを形成し、電気トーチの放電時にワイヤに流れる電流を検出してワイヤ切れの判別を行なう」と記載され、検出されるのは、電気トーチの放電時にワイヤに流れる電流であることが示されているが、それ以上には明らかではない。

(三)  次に、本件明細書の発明の詳細な説明の記載について検討する。

本件明細書の発明の詳細な説明には、前記一3に認定したように、本件発明の効果について請求の原因4(二)のとおり、「本発明の方法によれば、ボール形成時に流れる電流によって判別するため、リード側が絶縁されていても何ら支障をきたさない。またボールの出来工合もワイヤ切れの判別と同時に検出可能であるので、常に良品質のボンディングを行なうことができるようになる。」(同二頁4欄四行から七行)と記載されている。

また、発明の詳細な説明中の実施例についての説明には、「本発明においては、前記ボール1aの成形に電気トーチ7を使用し、この電気トーチ7によりワイヤ1に高電圧を加え、放電した時にワイヤ1に流れる電流を測定し、その電流のバラツキによりワイヤ切れ及びボールの出来工合を判別するものである。即ち、ボンディング途中にワイヤ切れが生じた場合は、ワイヤ1はスプール(図示せず)に巻き戻されるため、工具3よりワイヤ1は突出していなく、電気トーチ7を放電してもワイヤ1には電流が流れない。またクランパー2によりワイヤ1を切断する時に、正常な切断が行なわれなかった場合は、ボール1aを成形するために必要な一定の長さのワイヤ1が工具3の下に出ていないことになる。そのためワイヤ1の先端と電気トーチ7との距離が変化し、ワイヤ1に流れる電流は正常なボール成形時に流れる電流に比較して大きな差が生じる。そこでワイヤに流れる電流を測定することにより、ワイヤ切れ及びボールの出来工合を判別することができる。」(同一頁2欄二八行から二頁3欄一〇行)との記載がある。

右のとおり、実施例としては、「放電した時にワイヤに流れる電流を測定し、その電流のバラツキによりワイヤ切れ及びボールの出来工合を判別するもの」、即ち、ワイヤ切れが生じた場合は、電気トーチを放電してもワイヤには電流が流れず、また、クランパーによりワイヤを切断する時に、正常な切断が行なわれなかった場合は、ワイヤに流れる電流は正常なボール成形時に流れる電流に比較して大きな差が生じるので、ワイヤに流れる電流を測定することにより、ワイヤ切れ及びボールの出来工合を判別することができることが開示されている。この実施例では、「ワイヤに流れる電流を測定する」とは、ワイヤに電流が流れていないこと、即ち、ワイヤに流れる電流の有無を測定すること、ワイヤの先端と電気トーチとの距離の変化による、ワイヤに流れる電流の差、電流のバラツキ、即ち、電流の強さを測定することであると認められる。

本件明細書の発明の詳細な説明には、右以外の「電流の検出」の具体的方法は開示されていない。

(四)  右(一)ないし(三)の事実によれば、本件発明の構成要件Bの「電流を検出し」の検出の対象は、「電気トーチの放電時にワイヤに流れる電流」であるから、検出の方法は、ワイヤに流れる電流そのものに応じた信号あるいはその電流を物理量の種類の変換や物理量の性質の変換等物理的に変換した信号を取り出すものであり、測定量は、電流の有無を含む電流の強さ、言い換えれば、電流ゼロを含む電流の強さであると認められる。

即ち、本件発明の構成要件Bの「電流を検出し」とは、電流ゼロを含む電流の強さを測定するために、ワイヤに流れる電流そのものに応じた信号あるいはその電流が前記のような物理的変換を受けた信号を取り出すことをいうものと認められる。

三  被告回路(一)のワイヤ切れ判別方法が本件発明の構成要件Bを充足するか否かについて判断する。

1  当事者の主張二(請求の原因に対する認否及び被告の主張)5(三)の事実は当事者間に争いがなく、このことと当事者間に争いがない別紙目録(一)の図面及び構造の説明、別紙図面第1図ないし第3図及び成立に争いのない甲第三号証並びに弁論の全趣旨によれば、被告が製造販売する被告回路(一)を用いた半導体ワイヤボンディング装置のワイヤ切れ判別回路は、別紙目録(一)の回路図記載の検出素子32a、32bに別紙図面第1図記載の回路を接続したもので、被告回路(一)に別紙図面第1図記載の回路を併せた被告回路(一)’のワイヤ切れ判別方法は、次のとおりである。

(一)  連動スイッチ11、41の切換えにより、11aと11c、41cと41aとを接続すると、電源14及び電源14によって充電されていたコンデンサ15の電圧が、電気トーチ7とワイヤ1間に印加される。

(二)  ワイヤ1の先端と電気トーチ7とが放電が生じ得る間隔を有している場合には、ワイヤ1と電気トーチ7との間に放電が起こり、同所間が導通して、ワイヤ1に電流が流れ、ワイヤ1の先端にボール1aが形成される。ワイヤ1に流れた電流は線12、ダイオード23を通り、まず、抵抗25と定電圧ダイオード28に分流され、更に抵抗25に流れた電流は、抵抗27と発光ダイオード30aとに分流され、発光ダイオード30aが発光し、フォトトランジスタ30bのコレクタCとエミッタE間が導通状態となる。

(三)  ワイヤ1の先端と電気トーチ7とが接触している場合には、短絡しているのであるから、ワイヤ1に電流が流れ、右と同様にして、フォトトランジスタ30bのコレクタCとエミッタE間が導通状態となる。

(四)  ワイヤ切れによりワイヤ1の先端が工具3から出ていない場合には、放電が起こらず、したがって、発光ダイオード30aが発光することもなく、フォトトランジスタ30bのコレクタCとエミッタE間が導通状態となることもない。

(五)  他方、フォトトランジスタ30bとトランジスタ31のコレクタCには、五ボルト電源から別紙図面第1図のコネクタCN-106の端子<3>、検出端子32aを経由して五ボルトの電圧が印加されているから、フォトトランジスタ30bのコレクタCとエミッタE間が導通状態のときにはK点の電位は五ボルトである。

K点とS点では、フォトトランジスタ30bのコレクタCとエミッタE間の導通状態が継続し、したがってK点の電位が五ボルトのままで継続すると、コンデンサCEに電荷が充電されていき、同時にS点の電位が時間の経過とともに零ボルトから最大限五ボルトまで漸次増加して行く。他方、フォトトランジスタ30bのコレクタCとエミッタE間が非導通状態となると、コンデンサCEに充電されていた電荷が放電されて、S点の電位は、漸次減少して行き、最後に零ボルトになる。

T点及びP点は、トランジスタQ1のエミッタフォロアにより、S点の電位変化とほぼ同様の電位変化が現われる。即ち、P点では、フォトトランジスタ30bのコレクタCとエミッタE間の導通状態が継続し、したがってK点の電位が五ボルトのままで継続すると、P点の電位が時間の経過とともに零ボルトから最大限五ボルトまで漸次増加して行き、他方、フォトトランジスタ30bのコレクタCとエミッタE間が非導通状態となると、P点の電位は、漸次減少して行き、最後に零ボルトになる。

第1コンパレータC1のプラス端子には、五ボルト電源から可変抵抗器VR18を経て分圧された所定の電圧(以下「第1基準電圧」という。)が印加され、マイナス端子には、P点の電位電圧が印加されており、第2コンパレータC2のプラス端子には、五ボルト電源から可変抵抗器VR19を経て分圧された所定の電圧(以下「第2基準電圧」という。)が印加され、マイナス端子には、P点の電位電圧が印加されている。

第2基準電圧は、第1基準電圧より高く設定されている。

第1コンパレータC1においては、P点の電位が第1基準電圧より低い間は、高い電圧Hを出力し、P点の電位が第1基準電圧より高くなると、低い電圧Lを出力する。

第2コンパレータC2においては、P点の電位が第2基準電圧より低い間は、高い電圧Hを出力し、P点の電位が第2基準電圧より高くなると、低い電圧Lを出力する。

K点の電位が零ボルトのままでは、第1コンパレータC1及び第2コンパレータC2の出力は、電圧Hである。

ワイヤ1の先端とトーチ7の間の放電によって適正なボールを形成するのに必要な放電の継続時間の下限の時間を求めてt1とし、そのt1経過時のP点の電圧を第1基準電位として設定し、適正なボールを形成するのに必要な放電の継続時間の上限の時間を求めてt2とし、そのt2経過時のP点の電位を第2基準電位として設定しておくと、K点の電位が五ボルトの状態が、フォトトランジスタ30bのコレクタCとエミッタE間の導通開始からt1継続し、P点の電位が時間の経過とともに零ボルトから次第に増加してゆき第1基準電圧を超えると、第1コンパレータC1の出力は電圧Lに変わるが、第2コンパレータC2の出力は電圧Hのままである。

K点の電圧が五ボルトの状態が更に継続し、フォトトランジスタ30bのコレクタCとエミッタE間の導通開始からt2後にP点の電位が増加して第2基準電圧を超えると、第2コンパレータC2の出力も電圧Lに変わる。

(六)  ここで、

(1) ワイヤ1と電気トーチ7間の放電がt1以上継続したがt2まで達しない前に終了した時、即ち適正な範囲の放電があった時には(ワイヤの先端に適正な大きさのボールが形成される。)、第1コンパレータC1、第2コンパレータC2の出力は、当初、共に電圧Hを表示していたのが、t1後に、第1コンパレータC1の出力のみが電圧Lに変わり、t2に達した後も第1コンパレータC1の出力が電圧Lで、第2コンパレータC2の出力は電圧Hの状態である。

(2) ワイヤ1と電気トーチ7間の放電が継続したがt1に達する前に終了した時、即ち適正な範囲より少ない放電しかなかった時には(ワイヤの先端に形成されるボールの大きさが小さすぎる。)、t2に達した後も第1コンパレータC1、第2コンパレータC2の出力は、共に電圧Hを表示したままで変化がない。

(3) ワイヤ1と電気トーチ7間の放電がt2以上継続した時、即ち適正な範囲より多い放電があった時には(ワイヤの先端に形成されるボールの大きさが大きすぎる。)、第1コンパレータC1、第2コンパレータC2の出力は、当初、ともに電圧Hを表示していたのが、t1後に、第1コンパレータC1の出力のみが電圧Lに変わり、t2に達した後は、第2コンパレータC2の出力もまた電圧Lに変わる。

(4) 電気トーチ7とワイヤ1が接触している場合には、第1コンパレータC1、第2コンパレータC2の出力は、当初、ともに電圧Hを表示していたのが、t1後に、第1コンパレータC1の出力のみが電圧Lに変わり、t2に達した後は、第2コンパレータC2の出力もまた電圧Lに変わる。

(5) ワイヤ切れによりワイヤ1の先端が工具3から出ていない場合には、t2に達した後も第1コンパレータC1、第2コンパレータC2の出力は、共に電圧Hを表示したままで変化がない。

(七)  右(六)(1)のとおり、t2に達した後第1コンパレータC1の出力が電圧Lの状態にあり、かつ第2コンパレータC2の出力が電圧Hの状態にあれば、適正な大きさのボールが形成されていると判別され、(六)(2)(5)のとおり、t2に達した後第1コンパレータC1、第2コンパレータC2の出力が共に電圧Hの状態にあれば、ワイヤ切れによりワイヤ1の先端が工具3から出ていないか、又は、形成されたボールが小さすぎることが判別され、(六)(3)(4)のとおりt2に達した後第1コンパレータC1、第2コンパレータC2の出力が共に電圧Lの状態であれば、ワイヤ1と電気トーチ7が接触しているか、又は、形成されたボールが大きすぎることが判別される。

(八)  なお、原告は、抵抗25と抵抗27、発光ダイオード30aの合成回路の電圧降下が五ボルト以下の場合をも問題にしているが、アーク放電させてワイヤを溶解しボールを形成させるためには、五ボルトをはるかに超える電圧を印加しなければならないことは当裁判所に顕著な事実であり、また、前記甲第三号証によれば電源14の電圧は四〇〇ないし四六〇ボルトであり、これがコンデンサ15に充電されて、電源14の電圧と合わせてワイヤに印加されるのであるから、最高約九〇〇ボルト程度の電圧となり、このような場合には、放電が起こる以上、ワイヤの五ボルト以下の状態は無視できるものである。

2  右事実によれば、被告回路(一)’は、電気トーチの放電時にワイヤに流れる経路に直列に定電圧ダイオード28が接続されており、充分大きな放電電流が流れるものと認められるから、定電圧ダイオード28に放電電流が流れるとその両端に五ボルトの電位差が生ずるもので、この定電圧ダイオード両端の五ボルトの電位差は、電気トーチの放電時にワイヤに流れる電流が、物理的変換を受けて電圧として取り出されたものとみることもできる。

しかし、結局は別紙図面第1図記載のコンデンサCE、第1コンパレータC1、第2コンパレータC2等からなる回路が、ワイヤに流れる電流の導通時間を検出して、<1>適正な大きさのボールが形成されているか、<2>ワイヤ切れ、又は、形成されたボールが小さすぎるか、<3>ワイヤと電気トーチが接触しているか、又は、形成されたボールが大きすぎるか、を判定しているものと認められる。

したがって、被告回路(一)’の採用する判別方法は、ワイヤに流れる電流の有無や強さを測定しているものではなく、ワイヤに流れる電流の導通時間を測定するための信号を取り出しているから「電流を検出し」に該当しない点でも、また、判別の結果がワイヤ切れの場合と形成されたボールが小さすぎる場合とを区別しておらず、「ワイヤ切れの判別」に該当しない点でも、本件発明の構成要件Bを充足しない。

3  原告は、被告回路(一)は検出端子32aと32bとの間の導通、非導通の検出により放電の有無、即ちワイヤ切れの有無を判別している旨主張する。

しかしながら、被告装置(一)のワイヤ切れ検出回路といわれるものは被告回路(一)の端子32aと32bの先の別紙図面第1図記載の回路を併せた被告回路(一)’全体として把握し、本件発明の技術的範囲と対比すべきものであるところ、前記認定のとおり、被告回路(一)’は、本件発明の構成要件Bを充足しないものであるから、原告の右主張は採用できない。

原告は、電流の継続時間の検出は、導通状態か非導通状態かを判断している中の、いわば場合分けにすぎない事柄であって、電流を見ていることには変わりがない旨主張する。

電気トーチの放電時にワイヤに流れる電流の導通時間を測定することは、時間の測定であって電流の測定とはいえないから、ワイヤに流れる電流の導通時間を測定するために、ワイヤに流れる電流そのものに応じた信号あるいはその電流が物理的変換を受けた信号を取り出すことは、本件発明の構成要件Bの「電流を検出し」に該当しないものである。

本件明細書中には、本件発明における「電流を検出し」には電流の継続時間を検出することを含むことを示す明示の記載も示唆もなく、当業者にとって「電流を検出し」には電流の継続時間を検出することを含むことが自明であることを認めるに足りる証拠はない。電流の継続時間の検出か導通状態か非導通状態かを判断する中の場合分けにすぎないとの主張は採用できない。

4  以上によれば、その余について判断するまでもなく、被告回路(一)を含む被告回路(一)’におけるワイヤ切れ検出方法は、本件発明の技術的範囲に属するとは認められない。

四  被告回路(二)のワイヤ切れ検出方法が本件発明の構成要件Bを充足するか否かについて判断する。

1  当事者間に争いのない別紙目録(二)の図面及び構造の説明並びに弁論の全趣旨によれば、被告回路(二)のワイヤ切れ検出方法は次のとおりであると認められる。

(一)  半導体スイッチ44をオンにすると、線46と線42との間に電圧が印加される。

(二)  ワイヤ1と電気トーチ7との間に放電が生じた場合には、ワイヤ1に流れる電流は抵抗92の両端の電圧として検出され、それと基準電圧94との差を検出する差動アンプ97の出力でトランジスタ90の導通が制御される。この制御により、抵抗92に流れる電流、即ち、ワイヤ1に流れる電流が一定値に保たれる。抵抗51と抵抗52の直列回路の両端間、つまり、線46と線42との間の電圧は、ワイヤ1と電気トーチ7との間の距離に応じて変わり、その距離が長くなればその間のインピーダンスが大きくなるので、電圧は大きくなる。

ワイヤ1と電気トーチ7との間の距離が適正な場合の抵抗51と抵抗52の直列回路の両端間の電圧の範囲を求めれば、ワイヤ1と電気トーチ7との間の距離が大きすぎる場合には、抵抗51と抵抗52の直列回路の両端間の電圧は右の適正な場合の電圧の上限を超え、ワイヤ1と電気トーチ7との間の距離が短かすぎる場合、抵抗51と抵抗52の直列回路の両端間の電圧は右の適正な場合の電圧の下限を下回る。

ワイヤ1と電気トーチ7とが接触して短絡の状態にある場合は抵抗51と抵抗52の直列回路の両端間の電圧は0に近く、右の適正な場合の電圧の下限を下回る。

ワイヤ切れによりワイヤ1の先端が工具3から出ていない場合は、ワイヤ1と電気トーチ7との間には放電が生じず、抵抗51と抵抗52の直列回路の両端間に、電源43の電圧とほぼ同じ大きさの大きい電圧が現われる。この電圧は、ワイヤ1と電気トーチ7との間の距離が適当な場合の電圧の上限を超えるものである。

(三)  この抵抗51と抵抗52の直列回路の両端間の電圧が抵抗51と抵抗52とで分圧されて線53を経て上限電圧用差動アンプ55A及び下限電圧用差動アンプ55Bのそれぞれの一方の入力部に入力され、上限電圧用差動アンプ55Aにおいては、他方の入力部から入力される上限基準電圧と比較され、下限電圧用差動アンプ55Bにおいては他方の入力部から入力される下限基準電圧と比較される。ワイヤ1と電気トーチ7との間の距離が適当な場合には、上限電圧用差動アンプ55A及び下限電圧用差動アンプ55Bのどちらからも出力がないように上限基準電圧及び下限基準電圧を設定する。

ワイヤ1と電気トーチ7との間の距離が大きい場合には、前記両差動アンプ55A、55Bに入力する電圧が上限基準電圧より高くなり、上限電圧用差動アンプ55Aから出力し、上限電圧用フォトサイリスタカプラ60Aを介して発光ダイオード63Aを発光させるとともに、フォトカプラ73のフォトトランジスタ73bのコレクタ及びエミッタにそれぞれ接続する端子78b、78a間が導通状態となる。ワイヤ切れによりワイヤ1の先端が工具3から出ていない場合も同様である。

ワイヤ1と電気トーチ7との間の距離が短い場合には、前記両差動アンプ55A、55Bに入力する電圧が下限基準電圧より低くなり、下限電圧用差動アンプ55Bから出力し、下限電圧用フォトサイリスタカプラ60Bを介して発光ダイオード63Bを発光させるとともに、フォトカプラ73のフォトトランジスタ73bのコレクタ及びエミッタにそれぞれ接続する端子78b、78a間が導通状態となる。ワイヤ1と電気トーチ7とが接触して短絡の状態にある場合も同様である。

2  右認定の事実によれば、抵抗92の両端にはワイヤに流れる電流を検出して得られる電圧が生じるが、この電圧はワイヤに流れる電流を一定値に保つための定電流制御に用いられているものであり、この電圧によってワイヤ切れを判別しているものではないことは明らかである。ワイヤ切れ及びワイヤと電気トーチの間の距離の判別に使用されているのは抵抗51と抵抗52の直列回路の両端間の電圧を分圧したもので、抵抗51と抵抗52の直列回路の両端間の電圧は、放電時にワイヤに流れる電流とワイヤと電気トーチとの間のインピーダンスの積であり、ワイヤと電気トーチとの間のインピーダンスはワイヤと電気トーチとの間の距離によって変化するが、他方、放電時にワイヤに流れる電流は前記の定電流制御によって一定値に保たれているのであるから、抵抗51と抵抗52の直列回路の両端間の電圧は、放電時にワイヤに流れる電流を検出したものではなく、ワイヤと電気トーチとの間のインピーダンスを検出しているものとみるべきである。

したがって、抵抗51と抵抗52の直列回路の両端間の電圧もこれを分圧して上限電圧用差動アンプ55A及び下限電圧用差動アンプ55Bに入力される電圧も、ワイヤに流れる電流に応じたものではないと認められる。このことは、ワイヤに流れる電流が前記の定電流制御によって一定に保たれている状態においても、ワイヤと電気トーチとの距離が適当でないと、ワイヤ1と電気トーチ7との間の距離が大きい場合には、上限電圧用差動アンプ55Aから出力し、発光ダイオード63Aを発光させ、ワイヤ1と電気トーチ7との間の距離が短い場合には、下限電圧用差動アンプ55Bから出力し、発光ダイオード63Bを発光させていることからも明らかである。よって、被告回路(二)は、「電気トーチの放電時にワイヤに流れる電流を検出」するものとは認められない。

また、ワイヤ切れによりワイヤ1の先端が工具3から出ていない場合は、ワイヤ1と電気トーチ7との間の距離が大きい場合と同様に、上限電圧用差動アンプ55Aから出力し、発光ダイオード63Aを発光させるとともに、端子78b、78a間が導通状態となって、ワイヤ切れとワイヤ1と電気トーチ72の間の距離が大きすぎる場合とを区別して判別しているものではないから、被告回路(二)は、「ワイヤ切れの判別」を行うものとも認められない。

3  以上によれば、その余の点について判断するまでもなく、被告回路(二)におけるワイヤ切れ判別方法は、本件発明の構成要件Bを充足するものとは認められず、したがって、本件発明の技術的範囲に属するものとは認められない。

五  よって、原告の本訴請求は、その余の点について判断するまでもなく、いずれも理由がないから、棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法八九条の規定を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 西田美昭 裁判官 櫻林正己 裁判官宍戸充は転補のため署名押印できない。 裁判長裁判官 西田美昭)

目録(二)

次に説明するワイヤボンディング装置に用いられている半導体ワイヤボンデイングにおけるワイヤ切れ検出回路

(説明)

一 図面の説明

図は、半導体ワイヤボンディングにおけるワイヤ切れ検出方法に用いられている検出回路図である。

二 構造の説明

ワイヤ1は、クランパー2を通って工具3の下端に延在している。ワイヤ1の端部にボール1aを形成する電気トーチ7は、端子40aに接続されている。前記クランパー2に接続された線41は接地され、また線41は、線42によって端子40bに接続されている。

電源43の一方は、半導体スイッチ44を介してトランジスタ90に接続され、トランジスタ90は線91によって抵抗92に、抵抗92は線93によって抵抗45に、抵抗45は線46によって前記端子40aに順次それぞれ接続されている。電源43の他方は、線47に接続され、線47は前記端子40bに接続されている。

前記線91には可変基準電圧源94の一方に接続された線95が接続され、可変基準電圧源94の他方に按続された線96は差動アンプ97の一方の入力部に接続されている。また前記線93には前記差動アンプ97の他方の入力部に接続された線98が接続されている。差動アンプ97の出力は線99によって前記トランジスタ90に入力されるようになっている。

線46と線47には、線50で直列に接続された抵抗51と抵抗52が接続され、線50に接続された線53はツェナーダイオード54を介して接地されると共に、上限電圧用差動アンプ55A及び下限電圧用差動アンプ55Bの一方の入力部に接続されている。また差動アンプ55A、55Bの他方の入力部には、それぞれ上限及び下限の基準電圧を設定する上限電圧用可変抵抗56A及び下限電圧用可変抵抗56Bが接続され、同56A、56Bはそれぞれ電源57A、57Bに接続されている。

前記差動アンプ55A、55Bの出力電圧は、それぞれ上限電圧用フォトサイリスタカプラ60A及び下限電圧用フォトサイリスタカプラ60Bの発光ダイオード60a1、60b1に接続されている。フォトサイリスタカプラ60A、60Bのフォトサイリスタ60a2、60b2は、入力側に抵抗61を介して電源62が接続され、出力側はそれぞれ発光ダイオード63A及び発光ダイオード63Bを介して接地されている。なお64A、64Bはフォトサイリスタカプラ60A、60Bのゲート用抵抗である。

フォトサイリスタカプラ60A、60Bの発光ダイオード60a1、60b1は線70A、線70Bで結線され、この線の一方は抵抗75、線76をかいして電源77に接続され、他方はフォトカプラ73の発光ダイオード73aの一方に接続されている。発光ダイオード73aの他方は、線71を介してタイミング回路79に接続されている。そして、フォトカプラ73のフォトトランジスタ73bのコレクタ及びエミッタは、それぞれ端子78a、78bに接続されている。

目録(一)

次に説明するワイヤボンディング装置に用いられている半導体ワイヤボグンディングにおけるワイヤ切れ検出回路

(説明)

一 図面の説明

図は、半導体ワイヤボンディングにおけるワイヤ切れ検出方法に用いられている検出回路図である。

二 構造の説明

ワイヤ1は、クランパー2を通って工具3の下端に延在している。ワイヤ1の端部にボール1aを形成する電気トーチ7は端子10aに接続されている。前記クランパー2に接続された線12は分岐されており、一方が接地され、他方は端子10bに接続されている。

前記端子10aは、抵抗20を介してスイッチ11の端子11aに接続されている。電源14は、一方が抵抗21を介して前記スイッチ11の端子11bと抵抗40を介してスイッチ41の端子41aに接続され、他方が線22により定電圧ダイオード28、抵抗27、発光ダイオード30a、スイッチ41の端子41bに接続されている。スイッチ11の可動端子11cは、コンデンサ15の一方に接続され、コンデンサ15の他方は、スイッチ41の可動端子41cに接続されている。

前記端子10bは、ダイオード23に接続され、ダイオード23は、線24によって抵抗25に接続され、抵抗25は線26によって抵抗27に接続され、抵抗27は前記線22に接続されている。また前記線22は、定電圧ダイオード28を介して前記線24に接続されている。

前記線26と線22は、フォトカプラ30の発光ダイオード30aに接続され、フォトトランジスタ30bのコレクタは、線33を通じて、検出端子32aに接続されている。フォトトランジスタ30bのエミッタは、トランジスタ31のベースに接続され、トランジスタ31のエミッタは、端子32bに接続されている。また線33はトランジスタ31のコレクタに接続されている。

<省略>

<19>日本国特許庁(JP) <11>特許出願公告

<12>特許公報(B2) 昭54-35065

<51>Int.Cl.2H 01 L 21/60 識別記号 <52>日本分類 99(5)C 13 庁内整理番号 6684-5F <24><44>公告 昭和54年(1979)10月31日

発明の数 1

<54>半導体ワイヤボンデイングにおけるワイヤ切れ検出方法

<21>特願 昭51-23780

<22>出願 昭51(1976)3月5日

公開 昭52-106677

<43>昭52(1977)9月7日

<72>発明者 山崎信人

武蔵村山市大字三ッ木字砂川海道2574の3株式会社新川製作所内

<71>出願人 株式会社新川製作所

武蔵村山市大字三ッ木字砂川海道2574の3

<74>代理人 弁理士 田辺良徳

<57>特許請求の範囲

1 ワイヤの先端に電気トーチの放電によりボールを形成し、電気トーチの放電時にワイヤに流れる電流を検出してワイヤ切れの判別を行なうことを特徴とする半導体ワイヤボンデイングにおけるワイヤ切れ検出方法。

発明の詳細な説明

本発明は半導体ワイヤボンデイングにおけるワイヤ切れ検出方法に関するものである。

一般に半導体部品の組立においては、ワイヤを保持する工具を半導体部品のリードフレームに相対的に変位させることによりスプールに巻かれたワイヤをリードフレームに取付けられたベレツト及びリードフレームに導いて熱圧着又は超音波によりボンデイングし、クランパーの上昇によりワイヤを切断する。切断後もクランパーは閉じているので、一定の長さのワイヤが工具の下に出ている。このワイヤの端部にトーチによりボールを作る。その後クランパーが開き、ワイヤにスプールのバツクテンシヨンがかかるが、前記ボールによりスプールに巻き戻されるのは防止される。

ところが、ボールが形成されなかつた場合、又はボールが形成されてもボンデイング途中でワイヤが切れた場合には、ワイヤはスプールに巻き戻されて正常な作業を続行できなくなる。

従来この種のワイヤ切れ検出方法は、半導体部品又は半導体部品の載置されたヒートブロツクとクランパー又は工具との間に電圧を加え、その間にワイヤを介して電流を流しておき、ワイヤ切れが生じた場合に電流が遮断することにより検出している。

しかるに、この方法は半導体部品のリード側が絶縁されているものは検出できない。また従来の方法はあくまでワイヤ切れを検出するのみで、トーチにより形成されたボールの出来工合を判定することは困難で、そのため常に安定した品質を維持してボンデイングを行なうことができなかつた。

そこで、本発明は半導体部品のリード側が絶縁されているか否かにかかわらず全てのものに適用できると共に、ボールの出来工合も判別できるワイヤ切れ検出方法を提供することを目的とする。

以下本発明の実施例を図面に基づき説明する。ワイヤ1はクランパー2、工具3を通りヒートブロツク4上に載置されたベレツト5及びリードフレーム6上にボンデイングされる。その後クランパー2によりワイヤ1は切断され、ワイヤ1の端部に前記工具3の側面に配設されたトーチ7によりボール1aを形成する。

本発明においては、前記ボール1aの成形に電気トーチ7を使用し、この電気トーチ7によりワイヤ1に高電圧を加え、放電した時にワイヤ1に流れる電流を測定し、その電流のバラツキによりワイヤ切れ及びボールの出来工合を判別するものである。

即ち、ボンデイング途中にワイヤ切れが生じた場合は、ワイヤ1はスプール(図示せず)に巻き戻されるため、工具3よりワイヤ1は突出していなく、電気トーチ7を放電してもワイヤ1には電流が流れない。またクランパー2によりワイヤ1を切断する時に、正常な切断が行なわれなかつた場合ば、ボール1aを成形するために必要な一定の長さのワイヤ1が工具3の下に出ていないことになる。そのためワイヤ1の先端と電気トーチ7との距離が変化し、ワイヤ1に流れる電流は正常なボール成形時に流れる電流に比較して大きな差が生じる。そこでワイヤに流れる電流を測定することにより、ワイヤ切れ及びボールの出来工合を半別することができる。

なお、電流ば電圧及びボール成形の大きさ等によつて異なるが、800~2000Vの場合、10~15mAの電流が流れる。

以上の説明から明らかな如く、本発明の方法によれば、ボール成形時に流れる電流によつて判別するため、リード側が絶縁されていても何ら支障をきたさない。またボールの出来工合もワイヤ切れの判別と同時に検出可能であるので、常に良品質のボンデイングを行なうことができるようになる。

図面の簡単な説明

図は本発明の作用を示す概略正面図である。

1……ワイヤ、1a……ボール、2……クランパー、3……工具、5……ベレツト、6……リードフレーム、7……電気トーチ。

<省略>

別紙図面

<省略>

<省略>

目録(一)限定図

<省略>

目録(二)限定図

<省略>

特許公報

<省略>

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